石田祐康監督『ペンギン・ハイウェイ』の感想と考察

映画『ペンギン・ハイウェイ』 予告1

『ペンギン・ハイウェイ』の初見での感想

変わり者の小学生男子の話。普通レベルの変わり者ではなく、やばいレベルの変わり者。

『イノセンス』を見た後なので、たぶん『イノセンス』よりは面白いと思う。だいぶハードルが下がった状態で見てる。とりあえず画面が明るいのがいいや。もう、それだけで『イノセンス』より面白い。

音楽のチョイスが良い。それだけで半分勝ったようなもんです。映画って。音楽半分。それを承知の上で、マーティン・スコセッシ監督は音楽まったくなしの『沈黙』を撮ったんですよ。すごいよね、スコセッシ。攻めてるよね。お年寄りなのに。

でもこの映画はスコセッシ監督のじゃなく『ペンギン・ハイウェイ』なんです。『ペンギン・ハイウェイ』の感想を書くべき。

ガキ大将登場。豚鼻。豚鼻のガキ大将が出てくると一気にダサくなりますよね。個人的には豚鼻の人はアニメには出てきてほしくないです。そこまで豚鼻の人って現実にいないし。ジャイアンの悪影響なのよな。

「苦いえのき茸のようなものが生えてきて、苦しんだ挙げ句、死んでしまうんだ」の「死んでしまうんだ」のところで遺影のカットが入るんですが、この遺影のカットを出すタイミングが、なんか普通。ここを微妙に早く差し込むか、遅く差し込むかのあたりでセンスが問われてるじゃないかと思うんだわ。つまり、普通。

なんでペンギンなんだろ? 魚とか猫とかじゃなく、ペンギン。かわいいからか? 飛べない鳥だからか? 飛べない鳥が大人になりたくてもなれない少年の象徴なんか?

しかしなんていうか、好感が持てますね。何もかもに。

おっぱいと、大きなおっぱいを持つお姉さんに憧れる少年、という世界なんです。それだけで『イノセンス』より共感が持てる。「大きなおっぱい」にそこまでの興味はないんですが、「大きなおっぱいを持つお姉さんに憧れる少年」には興味があります。その行く末に。そして少年、お姉さん、ペンギンの接点はどこにあるのか。

お姉さんが魅力的。それだけで楽しい。それが何よりだと思う。

「少年が素敵なお姉さんに憧れる」という設定は『フリクリ』と同じなんだけど、『フリクリ』のハル子と違ってお姉さんが魅力的なので共感できる。やっぱり、ハル子は魅力ないよ。素敵なお姉さんではない。共感できない。共感が大事。

この映画、二時間近くあるのよな。これが 70 分とか 80 分くらいだったらもっと面白かったと思うんですよね。なんで映画って 120 分前後で作らないといけないのか。映画館の都合的に長すぎるのがダメってのは分かるけど、短い分にはいいじゃん。人間、120 分も集中できないよ。タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』なんかは長い映画である意味があったし、なんならもっと長くてもいいと思ったけど、この『ペンギン・ハイウェイ』はもっと短くていいと思うんだ。製作コストは下がるわ、テンポは良くなるわ、見るハードルは下がるわでいいことずくめじゃん。

こうなったら嫌だなあ、と思う展開は、お姉さんには大人の彼氏がいて、少年がもやもやする、というやつなんだけど、そうはなってほしくない。それはありがちでつまんない。そうなったらもう「あーあ」って思いますね。ましてや、大人の彼氏が死んじゃったりしてたら、最悪です。それを事前に言っておきます。この後の展開、まったく知らないので。

少年、お姉さんの部屋に上がり込んだな。ラッキーエロス。ここまでくると、このお姉さんはショタです。でもたぶん、「単なるショタでした」ではないんだろうな。それだと感動できないから。でも私は「単なるショタでした」の方が感動します。

話が面白い。純粋に、話が。

少年、お母さんいないのか。

少年、モテていいなー。

海が出てくるシーン。ちょっと泣けるな。なんでだろ。たぶん、解けなくてもいい謎がそこにあるからなんじゃないかと思う。解けたらそこで終わりになってしまう儚さ。解けないでくれ、と思う気持ちは、既に死んでしまった誰かに死なないでほしい、と思う気持ちに近いんだと思う。気のせいかもしれませんが。

虫歯、ペンギン、海、お姉さん、チェス、ジャバウォック。どう繋がるんだろう。繋がって、謎が解けるとか思う気持ちはよこしまなんですかね。

森見登美彦と万城目学がなんかごっちゃになるんですよね。この映画は森見登美彦原作。

「嫌だ。私はこの研究に大人を入れたくないの」って女の子が言うんですが、これは良いセリフ。この場面では、まさにそう言ってほしかった。この映画の一番良いシーンはここです。ここ。

謎だらけ。でもこの謎はちゃんと収まるべきところに収まる。それが分かっているので最後まで見ようという気が消えない。

まとめ

なんだか分からないけど面白かった。もう一回見ないといけない。本当に何も分かってないんだけど。考察しようとするのは無粋なのかもしれないけど、でも自分は考察するよ。

あと、お母さんいたわ。なんか、お母さんかお父さんのどっちかはいないと思っちゃうんですよね。こういう話の場合。

『ペンギン・ハイウェイ』の考察

考察せずにはいられないので考察します。

まず「お姉さんは結局何者だったのか」という謎があります。

未来から来た説

お姉さんは少年の願望を具現化したものだった説、お姉さん宇宙人説など考えましたが、たぶん、お姉さんは未来から来た人なんじゃないかという説に落ち着きました。

根拠ですが「少年はいつか自分がお姉さんに会うことを確信しているから」というものになります。いつか必ず出会う、といえば、未来から来たか、生まれ変わりかのどっちかでしょう。

映画全体のトーンとして生まれ変わりっぽい感じはなかったので、消去法で未来から来た、ということになります。他に案もないので、この説を無理やり裏付けていきましょう。無理やり裏付ける中で別の可能性も見えてくるかもしれないし。

少年の願望説はもちろん根底にあるんですが、これはテーマであって設定ではないですよね。今は設定のことを問題にしております。

ペンギン。ペンギンが何を象徴しているのか。実は何も象徴していない、みたいな引っかけもあるかもしれませんが、それを言い出したら話が進まないので何かを象徴してる前提で進めます。

ペンギンと言えば、もちろん「飛べない鳥」なわけです。そこは外せないでしょう。ベタですが、外せないポイントです。

ペンギンのもうひとつの意味合いは「南極という、我々から見るとめちゃくちゃな世界に最適化して、後戻りできなくなってしまった生き物」でもあります。ペンギンは南極でしか生きられない。知らないけど。

なんにしても、ペンギンという生き物はいびつな生き物なわけです。そんなこと言ったら象もアリもいびつなんですが、「かわいくていびつ」というところが選ばれるポイントでしょう。

で、まあ、言うまでもないことですが、ペンギンは少年の象徴です。少年は大人になりきれていない飛べない鳥なので。ただ、少年はペンギンと違い飛ぼうとしている。

ペンギンにとって、海は外の世界の象徴でしょう。魚を取るためには海に行かないといけないけど、海には危険が待ち構えている。要は、社会です。

少年は変わり者なわけですが、変わり者が変わり者でいられるのは少年のうちだけです。とりあえずフィクションの世界では。現実には変わり者のやばい大人はいくらでもいるし、普通に働いてたりもするんですが、まあそれはいいや。

とにかく少年は変わり者で、成長するに従って普通になっていく。ピーターパンが見えなくなるとか、トトロが見えなくなるとか、まあその手のやつです。この世界のトトロはペンギン。

少年は成長し、普通になり、ペンギンも見えなくなり、人に弱みを見せるように変わってきたあたりでお姉さんに出会うんです。

でも、お姉さんはその時点では少年のことを知りません。お姉さんにとって少年は、あくまでも「初めて会う男性」でしかありません。でも、少年にとっては運命の人です。

二人の関係が恋人同士なのか、夫婦なのか、親子なのか、それ以外なのか、そのへんは分かりません。

ただ、なんらかの理由で、お姉さんは過去に戻らないといけない事態になります。

「過去に戻らないといけない」ケースというのは、まあ、誰かの命を守るためでしょうね。それ以外ないでしょ。

ただ、ここまで書いてきて、あれ? と思ったんですが、だったらお姉さん「私はいったいなんなんだろうね」とか言わないよな。じゃあタイムリープ説消えた。

パラレルワールド説

タイムリープじゃないとなると、やっぱりパラレルワールドでしょうね。ブラックホールとか出てきたし。二つの世界が綻んで繋がってしまった、ってやつでしょう。標識が車と融合してたりするのは二つの世界が交わっちゃってるからです。

たぶん、SFを嗜んでる人にはすぐ分かる設定なんだろうな。自分には分からん。

そうなると、きっと少年は、大きくなって、科学者になって、二つの世界を繋ごうとするのかもな。世界がどうなろうとも。そうなってくるともうエヴァの世界ですよね。

少年の願望説

でも、この映画の根底にあるのは「少年の淡い初恋。ひと夏の恋」です。この場合、相手の大人の女性は最後には消えるしかありません。ずっといたら条例に引っかかるから。

基本的にはショタものです。SFやメタファーの力で目眩まされそうになりますが、ショタです。おっぱいの大きいお姉さんがいて、純粋な少年がいたら、それはもう単なるショタです。また、おそらくですが少年はお姉さんと歯医者で出会ったのでしょう。お姉さんの胸が少年の頭とか頬とかに当たったに違いありません。本質はそこです。

歯医者にいるきれいなお姉さん。そのおっぱい。お姉さんに彼氏がいたら嫌だ。でも普通に考えたら彼氏とかいるんだろうな。じゃあ普通じゃなくしてしまえばいい。どこか別の世界から来たことにしよう。誰もいない孤独な世界から。そうすればもう誰のものでもない。という感じでしょうか。

正解とかあんのかな。原作読も。原作読んだら改めて感想書きます。