沙村広明『波よ聞いてくれ』の感想

とりあえず2巻まで読んでます。

とにかくちゃんとしてるんだけども

絵がうまくて、話の構成がしっかりしていて、キャラの性格が都合よくころころ変わることもないので、面白いはずなんですが、やっぱり逆で、ちゃんとしすぎてると面白くないんだなーと実感してます。

テレビドラマみたいな世界観とマーケティング

なんていうか、マーケティングで作られたマンガ、という気がするんですよね。マンガ家と編集者という少人数で作ってるので、テレビドラマを作るようなレベルのマーケティングではないと思うんですが、「こういうものを描きたい」じゃなく「こういうものを描いたら受ける」で作られてる感じがすごくして。そりゃ、みんな受けるように調整はするでしょうけど、それが「調整」っていうレベルなのか「受けることをメインに考えて設定を決める」っていうレベルなのかで話が違うじゃないですか。

たとえば脚本とかで言うと、「脚本家はまったくそんなこと思ってないんだけど、そんなこと思ってそうな人がいっぱいいるので、それに合わせたセリフを主人公に言わせてみる」みたいなことがあると思うんですね。脚本家は、その「そんなこと思ってそうな人」に何の思い入れもないんですよ。でもそういう人をあえて主人公に据えて、そういう人が共感できそうなことを言わせてみる、と。

で、このマンガですが、結婚を焦ってる妙齢の美人が主人公なんですけど、マンガ家も編集者も、本当にこの主人公に思い入れがあるんかい? って思っちゃうんですよね。ターゲットから逆算して、受けそうな主人公を作り上げてないかい? って。

なんか、テレビドラマなんですよね。内容が。テレビドラマの原作になりそうな内容だなーって。というか「結婚を焦ってる妙齢の美人が主人公」っていう時点で、自分は眉に唾つけますね。だって「結婚を焦ってる妙齢の美人が主人公」なんですよ?

まあ、単純に可愛げがなくて好感が持てないっていうだけの話ではあります。ちゃんとしすぎなんですよ。絵も、話も、セリフも。セリフも一見気が利いてるように見えて、微妙にダサくて、そのダサさがちょうどテレビドラマ的な世界観の枠に収まってるという。気が利きすぎててもダメ出し、ダサすぎてもダメで、絶妙な塩梅が必要なんですよ。

そう、セリフがダサいんですよ。おしゃれな、気の利いたこと言ってるように見えてダサいって、ダサいじゃないですか。それが地味に響いてるな。読後感に。

これで絵が『カイジ』とか『ドラゴン桜』みたいな感じだったら、好感持てるんですけど、うまいのよな。よく「デッサンが狂ってる」みたいなこと言うじゃないですか。その逆なんですよ。デッサン正確すぎなんですよ。

素直に面白いと言えない

完成度ものすごく高いけど、個人的にはなんか気に食わねえなって感じです。優秀すぎて嫌味だぜってことです。天才ではないけど、学年トップ周辺にいて、クラスでも「あいつ実は結構面白いよね」って言われるようなタイプです。

なんか、このマンガを素直に「面白い」と思えることができたら、自分は「そっち側」に行けるのかなという気がします。これを素直に面白いと言えない人は年収が低い気がします。そんな作品。

マンガ
マンガとかの感想を書く!