KAITO『青のフラッグ』

全体から醸し出される「正統派で王道の」感

なんか知ってる、このマンガ。よく見るやつじゃん、表紙。

こう、全体から醸し出される「正統派で王道の」感。好きじゃないです。

表紙と3ページくらい読んだだけで「これは売れるやつだ」っての分かるもん。

そういう空気を持ってるマンガ、どうにも好きじゃないんですよね。好きになれない。いいやつなのは分かってるんだけど。好きになれないというか、分かりあえない。

よく陽キャだ陰キャとか言いますが、そういうのとは別に「世間のど真ん中を歩いているのに、その自覚すらない層」の人たちがいると思うんですね。いるんですよ。

そういう人たちが読むマンガです。これは。

まだ3ページくらいしか目を通してない状態での判断ですが、たぶん間違ってないはず。

読み進めます。

『最強伝説黒沢』の逆の世界

読み進めましたが、ややこしい感じです。

こういうマンガから感じる疎外感を説明するのは難しいです。このマンガ自体が「若者の自意識」とか「疎外される悩み」とかを扱っているので、話がややこしいんですが、要するに「贅沢な悩み」ってことなんですよ。このマンガに出てくる彼らの悩みなんて。

でも、それ、君ら全員、顔立ちが整ってるから成立することだからね?

そう思うんです。この手のマンガを読むと。

ブサイクが存在することを許されない世界。

主人公が「冴えない人間」っていうポジションを担ってると思うんですが、でも、この主人公、80点くらいだからね。

100点のやつが「俺なんて本当は30点の人間だから…」とか言ったり、80点のやつが「100点じゃなきゃ生きてる意味ねーし…」とか、90点のやつが「やっぱり90点じゃ100点とは釣り合わないよね…」みたいな、そういう世界観だからね。

これほど残酷な世界はないと思うんだわ。

『最強伝説黒沢』の逆です。その逆の世界。

『青のフラッグ』の世界に『最強伝説黒沢』の黒沢、入ってきてほしい。入ってきて、説教してほしい。で、最後は警察に連れてかれるんですよ、黒沢。

人間の80%は黒沢側だからね。それを忘れないでいてほしい。

残りの20%側にいる人たちだけが、自分たちが選ばれし人間だという自覚もなく、この物語に入り込み、感情移入し、「分かる〜…」ってなるんです。選ばれし人間の贅沢な悩みだなんて、一生知ることもないんですよ。

全然違ってた。死にたい。

と思ったら、性的マイノリティーを扱ってたか。

そうなってくると話は全然違うわ。黒沢より深刻だもん。

黒沢みたいなことになってるわ、今。

黒沢みたいな感じで説教しようと思ったら、実はめちゃくちゃ的はずれなことを言ってて、収拾つかなくなってるわ。あわあわしてる。

申し訳ないから全部買って読むか。

でもなんか、騙されたわ〜。ずるい。

そうなってくると話変わるよな。俄然面白くなるよな。

ただ、性的マイノリティーを扱ってるとはいえ、というか扱ってるからこそ「選ばれた人間だけが存在する、きれいな枠の中でのお話」という部分は強調されると思うのよ。

「(顔立ちの整っている)同性愛者の想いを(あからさまな性的描写を避けて)扱う」という、このかっこで囲まれた部分を意図的にスルーしてるのよな。だから、そういう意味では最初の印象とあんまり変わらない。

まあ、それを言ったら『リズと青い鳥』とかもそうなんだけど、『リズと青い鳥』の方は、その世界が「きれいな枠でしかない」っていう自覚があるわけじゃん。まさにカゴの中の鳥なわけで。というか、その「自覚」が作品の中心だったりするわけじゃん。

その自覚があるのとないのとでは全然違うと思うんです。

道ならぬ恋で悩んでるのは同性愛者だけじゃなくて、ブサイクもそうだし、ロリコンだってそうだし、いろいろあるわけです。あとハゲとかデブも。「低所得」なんかも含まれてくるわ。もちろん障害者とかもそうだし。

『青のフラッグ』が同性愛者だけじゃなく、そういう性的はみ出し者を次から次へと出してきたら、おお〜…、ってなるけど、そういう世界にはしないと思うんだ。

何が言いたいかというと、今となっては負け惜しみでしかないですが、これを「リアルな青春」とは呼ばせないぜ、ってことです。同性愛者を出してきたからって、そこは譲れないぜ、と。

でも買お。申し訳ないから、買う。そういう購入理由もある。